2018年03月06日

厚生労働省裁量労働制データ捏造問題 その3

 裁量労働制を対象外の社員に違法適用していたとして昨年、厚生労働省東京労働局の特別指導を受けた不動産大手の野村不動産(東京)で、違法に適用されていた五十代の男性社員が二〇一六年九月に自殺し、長時間労働による過労が原因として労災認定されていたことが関係者への取材で分かった。把握された残業は最長で月百八十時間超あった。労働局は昨年十二月に特別指導を公表したが、調査のきっかけになったとみられる社員の自殺は明らかにしていない。

 政府は裁量労働制の拡大を今国会に提出予定の働き方改革関連法案に盛り込む方針だった。安倍晋三首相は国会で「働かせ放題にならないか」と追及された際、野村不動産への指導を具体例に挙げ「制度が適正に運用されるよう今後とも指導を徹底する」と答弁していた。

 裁量制は実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ労使で定めた一定の時間に基づき賃金を支払う制度。弁護士や記者などの「専門業務型」と、企画や調査を担う事務系の「企画業務型」がある。

 関係者によると、東京本社に勤めていた男性社員が自殺し、遺族が労災を申請。労働基準監督署が調べたところ、認定基準を超える長時間労働が確認されたとして、昨年十二月に労災認定した。

 野村不動産は約千九百人の社員のうち約六百人に企画業務型を適用していたが、労働局の調査で、多くの社員が対象外となる営業活動をしていたことが判明した。本社や各支店に是正勧告し、昨年十二月二十五日には社長に直接、改善を指導。翌二十六日に社名や指導内容を公表した。野村不動産は今年四月から裁量労働制を廃止するとしている。(東京新聞、2018.3.5)
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2018年03月02日

厚生労働省裁量労働制データ捏造問題 その2

 安倍晋三首相は二十八日深夜、今国会に提出予定の「働き方」関連法案から裁量労働制の対象を拡大する部分を削除するよう加藤勝信厚生労働相に指示した。裁量労働制を巡る不適切なデータ問題に対する世論や野党の反発を受け、裁量労働制の拡大には理解が得られないと判断。今国会への提出を断念した。看板政策に位置づける法案の骨格部分削除は、政権にとって打撃になった。

 首相は加藤氏や与党幹部らと官邸で会談し、関連法案について「国民に疑念を抱かせた。裁量労働制は全面削除する」と述べた。裁量労働制以外の部分は今国会に提出し、成立を図る考えを表明した。同様に野党の批判が強い「高度プロフェッショナル(残業代ゼロ)制度」の創設は維持する。

 加藤氏は、首相から裁量労働制の労働時間に関し、実態の把握をし直すよう指示を受けたと記者団に明らかにした。法案から切り離した裁量労働制に関連する部分を今国会に別の法案として提出することは「難しい」と述べた。

 首相はこれに先立つ衆院予算委員会で、裁量労働制について「きっちり実態把握をしない限り、政府全体として前に進めない」と新たな調査を実施する考えを表明。調査の方法については「厚労相を中心に検討させるが、相応の時間を要する」と述べた。

 政府は、残業時間の罰則付き上限規制や「同一労働同一賃金」、残業代ゼロ制度導入、裁量労働制の拡大を柱とし、八本の改正法案を一括して提出する方針だった。厚労省による労働時間の実態調査に関し、データの不備が相次いで発覚し、法案から裁量制の関連部分を切り離すべきだとの意見が与党内に強まった。

 関連法案を巡っては、首相が「裁量労働制の方が短いというデータもある」と国会で説明したが、野党の指摘で本来比較できないデータを比べていたことが明らかになり、答弁撤回と謝罪を余儀なくされた。

 首相答弁の根拠になった厚労省の「二〇一三年度労働時間等総合実態調査」では、一カ月のうち「最も残業時間が長い一日」で計算した一般労働者の労働時間と、裁量労働制で働く人の実際の労働時間を比較していた。その後も調査の不備が次々に判明し、野党は全面的な再調査と法案の提出断念を求めている。(東京新聞、2018.3.1)
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2018年02月21日

厚生労働省裁量労働制データ捏造問題 その1

 働いた時間に関係なく賃金が支払われる「裁量労働制」をめぐり、厚生労働省は19日、一般労働者と裁量制で働く人の労働時間を異なる条件で比較し、裁量労働制の方が短いとする不適切なデータを作成していたと公表した。今国会に提出予定の「働き方改革関連法案」には裁量労働制の対象拡大が盛り込まれており、データは裁量労働制の効果を示す根拠として安倍晋三首相の答弁にも引用(後に撤回)された。法案審議に影響が出るのは必至だ。

 厚労省によると、データの根拠になったのは「平成25年度労働時間等総合実態調査」。厚労省はこれを元に、裁量労働制の労働時間(1日平均9時間16分)は一般労働者(同9時間37分)より短いとする比較データを作成した。

 しかし、調査は一般労働者に「1カ月で最も長く働いた日の残業時間」を尋ねたのに対し、裁量制では1日の平均的な労働時間を聞いており、比較には不適切だった。さらに、一般労働者の残業時間に法定労働時間の8時間を加えたものを「労働時間」としていたほか、1日の残業が「45時間」などと誤って記された例が少なくとも3件あったのに、それらも加えて平均を算出していた。

 比較データは27年3月の民主党(当時)の厚生労働部門会議に初めて示され、その後も塩崎恭久前厚労相や今年1月の安倍首相の国会答弁で使われた。野党から指摘を受け、厚労省は今月7日、加藤勝信厚労相に「調査の方法や定義が不明確」と報告したという。

 厚労省は「意図的に数字を作ったわけではない。異なる方法で選んだ数値という認識がないまま比較した」と釈明。同日午前の衆院予算委員会理事会に調査結果を報告し謝罪したが、野党側が反発し、質疑は一時中断した。

 菅義偉官房長官は記者会見で「極めて不適切だった」と述べ、加藤氏も午後の予算委で謝罪。ただ、菅氏は働き方改革関連法案について「労働者にとっても極めて重要な改革。実現に向け全力で取り組む」と強調し、今国会での成立を目指す考えを強調した。

 ◇

 裁量労働制 実際に働いた時間に関係なく、あらかじめ定めた時間を働いたとみなし、賃金を支給する制度。仕事の進め方が労働者の裁量に大きく委ねられる職種が対象で、弁護士や新聞記者などの「専門業務型」と、企画や調査などを担う事務系の「企画業務型」の2類型がある。労働者が主体的に業務の遂行手段や時間配分を決定できるとされるが、深夜や休日に働いた場合以外には割増賃金が支払われない。政府は多様で柔軟な働き方につながると裁量制拡大を推進。労働組合は「長時間労働につながる」と反対している。(産経新聞、2018.2.19)
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2018年01月24日

AHM協同組合外国人実習生労組脱退強要事件

 フィリピン人技能実習生(25)が職場の暴力に耐えかねて労働組合に加入したところ、実習生の受け入れ窓口となった監理団体「AHM協同組合」(群馬県高崎市)が労組にファクスを送り、実習生を脱退させるよう求めたことが21日分かった。実習生にも労組加入の権利があるが、実習生を保護する監理団体などが役割を果たしていない形。労組は不当労働行為として神奈川県労働委員会に救済を申し立てた。

 ファクスには公益財団法人「国際研修協力機構」(JITCO)などがAHMに対し、労組加入者は実習先が見つからないとの見解を示したとも記載。これが脱退要請につながった可能性もある。労組脱退要請について労組側は「証拠が残るのは珍しい」とした上で、氷山の一角が露呈したとの見方を示している。

 この実習生らによると、2015年4月に来日した実習生ら4人は埼玉県の建設会社で勤務。殴る蹴るの暴力や「ばかやろう」など暴言を日常的に受け、16年12月に労組「神奈川シティユニオン」に入った。

 シティユニオンはAHMやJITCOに4人の新たな実習先を探すよう要求。AHMは昨年4月19日、シティユニオンへのファクスに「実習の継続意志があるということですが、東京入国管理局および、JITCOが労働組合に加入している技能実習生を受け入れる企業は見つからないとおっしゃっていましたので、移籍先企業を見つけるためにも貴組合を脱退させていただけますでしょうか」と記した。

 AHMは取材に「ファクスの評価は係争中のため回答を差し控える」、JITCOは「係争中の案件につき、対応や回答は控える」とした。東京入管は「個別事案への回答は控えるが、一般的には入管が実習生を労組から脱退させるよう指導することはない」と答えた。(共同、日刊スポーツ、2018.1.21)


 この件は建設業ですが、今後団塊の世代が後期高齢者になれば外国人労働者に介護を頼むしかありません。労組にも入らせない国に誰が来てくれるのか。


<参照>
ウィキペディア 日本国憲法第28条
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2017年07月25日

新国立競技場現場監督過労自殺事件

 東京五輪のメイン会場となる新国立競技場の工事を請け負う建設会社に勤務していた都内の男性=当時(23)=が、3月に自殺していたことが20日、分かった。遺族の代理人弁護士が明らかにした。直前1カ月間の残業は200時間を超え、遺族らは過労でうつ病を発症し自殺したとして、上野労基署に労災申請した。

 代理人の川人博弁護士によると、男性は入社1年目で、昨年12月から競技場の地盤改良工事の施工管理業務を担当。3月2日から行方不明になり、4月に長野県で遺体が発見された。

 代理人らが工事現場のセキュリティー記録などを調べたところ、失踪する前の1カ月間は211時間56分の残業が認められた。深夜労働が常態化し、徹夜勤務もあったという。代理人は「工期が遅れる中、五輪に間に合わせるため作業日程は極めて厳しかった」と指摘した。

 男性は遺書に「身も心も限界な私はこのような結果しか思い浮かびませんでした」などと記していた。代理人らは今後、都など関係機関に労働環境改善を要求する。

 会社側も36協定(原則45時間、特別の場合80時間が上限)に違反する時間外勤務があったと認め、両親に謝罪する予定。(時事通信、2017.7.20)


 2020年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場(東京都新宿区)の建設を巡り、下請け業者で現場監督を務めていた男性(23)=都内在住=が自殺したのは月200時間近い残業を強いられ精神疾患を発症したためだとして、両親が東京労働局上野労働基準監督署に労災申請した。両親の代理人の川人博弁護士が20日、明らかにした。

 遺族が労災申請

 申請は12日付。都内で記者会見した川人弁護士によると、工事現場の入退場記録を基に月々の残業時間を調べたところ、過労死ライン(月80時間)を超えており、16年12月が約94時間▽今年1月が約142時間半▽同2月には約196時間−−に達し、2月は徹夜勤務が3回あった。

 男性は大学卒業後の16年4月に都内の土木工事会社に入社し、12月中旬から同競技場の地盤改良工事の施工管理業務を担当。今年3月2日、勤務先に「今日は欠勤する」と電話した後に行方不明になり、4月15日に長野県内で遺体で発見された。「身も心も限界な私はこのような結果しか思い浮かびませんでした。家族、友人、会社の方、本当にすみませんでした」と書かれた遺書が遺体の近くに残され、県警から自殺と判断されたという。

 母親の証言では、午前4時半に起床し深夜1時ごろの帰宅が多かった。生前、両親に「機械の調子が悪く、日程がタイト(ぎりぎり)だ」と話していたといい、川人氏は「五輪開催という国家プロジェクトに間に合わせねばという重圧が現場にあった」と指摘した。

 男性の勤務先の土木工事会社は毎日新聞の取材に「遺族に対し大変申し訳ない。真摯(しんし)に受け止めている」と答え、元請けの大成建設は「専門工事業者に対し、今後も法令順守の徹底を指導する」とのコメントを出した。

 工期短縮迫られ

 新国立競技場を巡っては、総工費が膨らんだことが批判され15年7月に旧計画が白紙撤回され、本体工事は当初予定から約1年2カ月遅れて16年12月に着工。発注者である日本スポーツ振興センター(JSC)は事業主体の選定にあたり、工期短縮を求めていた。

 20年大会に向けて各競技会場の整備が進む中、川人弁護士は20日、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長宛てに、長時間残業撲滅を求める要請書を提出。「国家的行事であるからといって、その準備のために労働者の命と健康が犠牲になることは断じてあってはならない」と訴えた。今後は、東京都の小池百合子知事や丸川珠代五輪担当相、JSC宛てに同様の要請書を出すという。(毎日新聞、2017.7.20)
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