2012年09月25日

ETV『シリーズ チェルノブイリ原発事故・汚染地帯からの報告 「第2回 ウクライナは訴える」』について

2012年9月23日(日) 夜10時
2012年9月30日(日) 午前0時50分 再放送
シリーズ チェルノブイリ原発事故・
汚染地帯からの報告
「第2回 ウクライナは訴える」

 去年4月、チェルノブイリ原発事故25周年の会議で、ウクライナ政府は、汚染地帯の住民に深刻な健康被害が生じていることを明らかにし世界に衝撃を与えた。

 チェルノブイリ原発が立地するウクライナでは、強制避難区域の外側、年間被ばく線量が5ミリシーベルト以下とされる汚染地帯に、事故以来26年間、500万人ともいわれる人々が住み続けている。

 公表された「Safety for the future未来のための安全」と題されたウクライナ政府報告書には、そうした汚染地帯でこれまで国際機関が放射線の影響を認めてこなかった心臓疾患や膠(こう)原病など、さまざまな病気が多発していると書かれている。

 特に心筋梗塞や狭心症など心臓や血管の病気が増加していると指摘。子供たちの健康悪化も深刻で2008年のデータでは事故後に生まれた子供たちの78%が慢性疾患を持っていたという。報告書は事故以来蓄積された住民のデータをもとに、汚染地帯での健康悪化が放射線の影響だと主張、国際社会に支援を求めている。

 今年4月、私たちは汚染地帯のひとつ、原発から140キロにある人口6万5千人のコロステン市を取材した。この町で半世紀近く住民の健康を見続けてきた医師ザイエツさんは、事故後、目に見えて心臓病の患者が増えたことを実感してきたという。その原因は、食べ物による内部被ばくにあるのではないかとザイエツさんは考えている。予算が足りず除染が十分に行えなかったため、住民は汚染されたままの自家菜園で野菜などを栽培し続け食べてきた。また汚染レベルの高い森のキノコやイチゴを採取して食用にしている。

 学校の給食は放射線を計った安全な食材を使っている。しかし子供たちの体調は驚くほど悪化。血圧が高く意識を失って救急車で運ばれる子供が多い日で3人はいるという。慢性の気管支炎、原因不明のめまいなど、体調がすぐれない子供が多いため体育の授業をまともに行うことができず、家で試験勉強をして体調を崩すという理由から中学2年までのテストが廃止された。

 被ばく線量の詳細なデータはなく、放射線の影響を証明することは難しいが、ウクライナの汚染地帯で確かに人々は深刻な健康障害に苦しみ、将来に不安を抱えながら暮らしていた。

 しかしIAEAをはじめとする国際機関は、栄養状態の悪化やストレスなども原因として考えられるとしてウクライナの主張を認めていない。放射線の影響を科学的に証明するには被ばくしていない集団と比較しなければならないが、住民の被ばくに関するデータも、被ばくしていない集団のデータも十分ではなく、今後も証明は困難が予想される。

 国際社会に支援を訴えながら、放射線の影響とは認められていないウクライナの健康被害。チェルノブイリ原発事故から26年たった現地を取材し、地元の医師や研究者にインタビュー、ウクライナ政府報告書が訴える健康被害の実態をリポートする。(NHK ETV)


 福島第一原発事故によって今後どのような健康被害が出るのか。チェルノブイリの現状からある程度予想できるのではないかということは我々素人でも思い付きます。ウクライナ政府は実際に広範な調査を行っており、その結論は癌以外の慢性疾患も増加するという事実でした。ただ、このことをIAEAなど国際機関は認めていません。日本政府もこれに与しているからこそ年間被曝線量20mSvという基準を一旦決めたのです。

 ウクライナの子どもたちは病気になりました。それは紛れもない事実です。木村准教授の報告を無視した日本政府の意図的な無作為が今後どういう結果に終わるかは福島の子どもたちがその身を以って証明します。恐ろしいことだと私は思います。以下は番組からの抜粋。


 236万人の健康状態と被ばくとの関係をウクライナ政府は検討しました。こうして作られたウクライナ政府報告書は一つの注目すべき問題提起をしています。多くの被災者が心筋梗塞や脳血管障害など様々な慢性疾患を発症しているという訴えでした。しかし、IAEAなど国際機関の見解では科学的にはこうした病気は原発事故による放射線の影響であるとは認められないとしています。

 ウクライナ政府報告書と国連で被ばくの影響を評価する国連科学委員会との見解の相違です。

【ウクライナ政府報告書】
白血病
白内障
小児甲状腺がん
心筋梗塞
狭心症
脳血管障害
気管支炎 など

【国連科学委員会】
白血病
白内障
小児甲状腺がん

 報告書が放射線との関係がある病気を多く明記するのに対し、国連科学委員会は事故直後に原発で働いていた人の白血病と白内障、汚染されたミルクを飲んだ子供に起きた甲状腺がんのみを指摘しています。なぜ、ウクライナは国際社会が科学的には認められないとした病気まで原発事故の影響だと訴えることにしたのか。

 ウクライナ非常事態省で長官を務める報告書の責任者ホローシャさんです。

「確かに政府報告書の内容は国際的にコンセンサスがとれていないものもあります。しかし私たちはこのような事実があることを黙っていられません。科学者は公開すべきだと思っています。そして私たちは発表すべきだと思っています」(ウクライナ非常事態省立入禁止区域管理庁 ウラジーミル・ホローシャ長官)

 報告書は心臓や血管の病気の増加に注目しています。原発近くからの避難民の死因です。がんなど腫瘍以外の死因の実に9割を心臓や血管の病気が占めていると報告しています。

 国立放射線医学研究所。ウクライナでの研究の中心です。報告書を執筆した医師の多くがここに所属しています。執筆者の一人、心臓や血管の病気を担当したブズノフさんです。たとえば、心筋梗塞や狭心症については甲状腺等価線量で0.3Svから2.0Svの被ばくをした避難民は被ばくの少ない人たちの3.22倍発症しやすく、それ以上被ばくをした人は4.38倍発症しやすいと弾き出しています。これまで国際的には心理的ストレスや社会的影響とされてきた病気です。

「私は「放射線の影響」とよく言われる「心理・社会的ストレスの影響」とを比較する研究を始めたばかりですが、これまでの蓄積から言えばその二つの影響はほぼ同じだと思っています。低い線量の放射能の影響が現れていると言えるのは心臓や血管の病気です」(ウクライナ放射線医学研究所 ウラジーミル・ブズノフ)


 被災地の甲状腺がん患者の治療に当たってきた国立内分泌代謝研究所です。事故の3年後に甲状腺がんと原発事故の関係を主張したテレシェンコさんです。いまも多くの患者の治療に当たっています。

 事故当時10代だったこの女性は今年甲状腺がんになりました。子どものときの被ばくが引き起こす甲状腺がんが今頃になって発症するケースが汚染地帯の全域で増え続けているといいます。

「チェルノブイリから放出されたヨウ素は爆発から2ヶ月後にはほとんどなくなりました。それ以降甲状腺には影響を与えていません。子どもにも大人にも誰にも影響を与えなくなりゼロまで減ったのです。しかし実は病気の発症数は上昇しています。つまり1986年の事故当時の影響が現在まで続いているということです」(ウクライナ国立内分泌代謝研究所 ワレリー・テレシェンコ)

 事故当時14歳以下だった被災地の子どもがその後いつ甲状腺がんを発症したか。その人数を表したグラフです。1989年以来、年が経つにつれて甲状腺がんを発症する人が増え続けています。事故直後の放射性ヨウ素が一体なぜ今頃発症を促すのか。

「被ばくした線量によると考えられます。被ばく線量が高かった子どもは早い時期に甲状腺がんになりました。被ばく線量が低かった子どもは後になって甲状腺がんになると考えられます。しかし誰もこのような状況が生まれた原因について確かな説明はできていません」(同上)


 去年、ウクライナが政府報告書を発表したのと同じ頃、福島第一原発で事故が起きました。4月22日、国は一般人が居住し続けてよいとする被ばく線量の上限を年間20mSvと定めました。しかし、この基準は高すぎるという不信の声も上がりました。政府は去年11月、有識者による検討の場を設けます。低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループです。

 ワーキンググループの目的の一つはこの20mSvという数値が妥当かどうか評価することにありました。ここで注目されたのがチェルノブイリ原発事故から25年経ったウクライナの状況でした。汚染地帯に足繁く通う科学者がウクライナでの健康状態の悪化を報告しました。しかし、このとき健康の悪化と被ばくの因果関係を巡り議論が鋭く対立しました。

木村「私から言えるのは私は現実を見る。現実を実際にチェルノブイリでも福島でも。実は現地で見る限りですが」
長瀧「客観的に」
木村「客観的に」
長瀧「何が起こったか25年たって」
木村「25年経って明らかに病気。それもがん以外の病気が増加傾向にある」
長瀧「ちょっと今こうワーキンググループは科学的に何が起こるか。本当に何が起こるかということを議論したいものですから。ひとつひとつの事情を見ていくと科学的に認められたのはいわゆる甲状腺のがんでそれ以外は科学的には認められなかった」
(木村:木村真三獨協医科大学准教授、長瀧:長瀧重信長崎大学名誉教授(ワーキンググループ共同主査))

 ワーキンググループの多くの委員は小児甲状腺がん以外の病気の増加と被ばくの因果関係は科学的に認められないとの立場を取りました。

 去年12月、ワーキンググループの結論が提出されました。報告書は様々な疾患の増加を指摘する現場の医師の観察があるという一文が添えられつつも、国際機関の合意として疾患の増加は科学的に確認されていないと結論付けています。その上で20mSvという基準は健康リスクは低く、十分にリスクを回避できる水準だと評価したのです。
(ETV『シリーズ チェルノブイリ原発事故・汚染地帯からの報告 「第2回 ウクライナは訴える」』)
posted by リュウノスケ at 00:19| Comment(0) | TrackBack(0) | テレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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