2013年08月16日

日本禁煙学会『風立ちぬ』の喫煙シーンを批判

 全国で大ヒットを記録中の宮崎駿監督のアニメ映画「風立ちぬ」に喫煙シーンが多いことを、医師らでつくるNPO法人「日本禁煙学会」(東京)が問題視、スタジオジブリに対し、たばこの描き方に配慮を求める文書を14日までに送った。

 学会側は「未成年の観客も多く影響も大きい」と指摘し、文書はホームページでも公開。インターネット上では賛否両論の書き込みが広がっており、学会には「表現の自由」「作品に文句をつけるな」といった苦情が数件寄せられているという。

 学会は文書で、作品の中で主人公の教室や職場、ホテルのレストランなど喫煙シーンが「数え上げれば枚挙にいとまがない」と批判。肺結核で寝込む妻の手を握りながらたばこを吸う場面については「夫婦の心理を描写する目的があるとはいえ、他の方法でも十分表現できたはず」とした。

 未成年の学生がたばこを友人にせがむ場面もあり、同会の作田学理事長は取材に「未成年者の喫煙を助長する。過去の出来事とはいえ、子どもたちへの影響は無視できない」と非難した。(日刊スポーツ、2013.8.14)


「結核は結核菌を含む飛沫核の吸入による空気感染を示す。結核患者からの咳、くしゃみ、唾より感染する。世界人口の三分の一が結核菌に感染しており、毎秒の単位で感染患者が発生している」(ウィキペディア 結核 伝播)


宮崎駿「自分がやりたいからって体が動くわけないし頭が動くわけじゃない。かといって前やってきたことをやりたいと思ってないから。もっと技術的にややこしいことやもっと仕立て方が俗受けしないことが分かってもやるっていうようなことに傾く年齢なんだよ。老監督ってみんなそうじゃない?」
(NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀 「風立ちぬ」1000日の記録』、2013.8.26、以下同じ)

宮崎駿「日曜日はもうすごかったよ。なんかしないと気分変わんないから。オレは散歩に行った。全生園というハンセン病の展示がね、すごかったですね。女房も行ったんだけど2人ともそれについては何もしゃべらないで帰ってくるっていう。いやちょっと衝撃的ですね。おろそかに生きちゃいけないって気持ちになるよあれ見ると本当に」(2012.10.15撮影)

宮崎駿「だけど子どもが通路を走るだろうなとか思うじゃない? そうすると走るよなこれはと思うんですよ。子ども連れてくるやつがいけないんだって次の瞬間に思ったりするんだけど連れてきちゃうからなと。わかんない映画を見るっていうのも子どもの経験だよなとかね」

(二郎役を決める会議)
宮崎駿(以下宮崎)「昔のインテリって滑舌がはっきりしてて(声が)ちょっと高いんですよ。はっきり言って言葉数が少ないだけなんです。頭良すぎてあんまり余計なことを言わないだけなんです。内気だからしゃべんないんじゃないの。そういうややこしいキャラクターなんです」
鈴木敏夫(以下鈴木)「素人がやったほうがまだ感じが出そうですよね。(小声で)庵野」
宮崎「庵野ですか? 庵野面白いね。庵野の声ねえ。頭いいから何を要求されてるかは分かるよね。1回とってみたら?」
鈴木「オーディションしてみましょっか」
宮崎「これは開闢以来の」


 『こちら葛飾区亀有公園前派出所』で「今後この漫画に煙草を一切ださない」と宣言する衝撃的な回がありましたが、こういう時代になってみると改めて秋本治の先見性に感心します。

 一方、宮崎駿は言わずと知れたヘビースモーカー。『風立ちぬ』の時代背景を考えれば成人男性が煙草を吸っているのは当たり前とはいえ、『未来少年コナン』のジムシーも「タバタバ」を吸っていたように「禁煙ファシズム」に抵抗するため確信犯的にやっているような気もします。

 ネット上で言われているように映画の描写に介入するのは表現の自由という観点からして問題がありますが、日本禁煙学会が言っているのは映画のレイティングの話。今回のような運動によって将来的に喫煙シーンをPG12に該当させるつもりなのでしょう。

 宮崎駿は国民的作家なので狙い撃ちされました。気の毒といえば気の毒ですし、自業自得といえば自業自得といえます。煙草も兵器も美少女も大好きなのにいい人と思われているのがそもそもの間違いなんじゃないでしょうか。


 【追記】
 『風立ちぬ』を見てきました。確かに喫煙シーンが多々見受けられましたが、時代背景を考えると違和感は感じませんでした。やはり喫煙シーンをレイティング対象にするか否かの問題だと思います。

 それよりも気になったのはネット上でも指摘されているように結核のヒロイン菜穂子が主人公二郎とキスしまくること。フジテレビ『神様、もう少しだけ』の金城武同様恋人の死を覚悟した二郎が感染覚悟の愛情表現をしているわけですが、キスを求められても菜穂子は二郎の健康のために涙を飲んで拒絶する演出でよかったのではないか。

 魔の山=サナトリウムを下りた菜穂子が結婚初夜で同衾を求めたように、この切実なエゴイズムこそが「風立ちぬ、いざ生きめやも」という作品のテーマなのかもしれませんが、だからこそ最後の最後まで我慢して欲しかった。特効薬ストレプトマイシンにより結核患者が救われるのはもうすぐですし、脚本的にも「溜め」があったほうがより感動できたと思います。

 本人も自覚的なように物語の力で子どもたちを楽しませる天才作家としての宮崎駿はもういません。黒澤明の晩年に近いと思いますが、そこには日本の未来を憂慮する老人がいるだけです。全盛期ならあり得ない様々な齟齬や矛盾、そしてカタルシスのなさは作品自体が「ありがたいお説教」だと思って目を瞑るしかないでしょう。

 最後に、棒読み全開で大変話題になった庵野秀明。ヘタクソなのはしょうがないとして、若き堀越二郎は絶対に青年感が必要な役です。53歳という中年の庵野はどう考えても相応しくない。『ハウルの動く城』のソフィー役が倍賞千恵子だったのと同じくらいの違和感です。

 NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』で主役を庵野にするやり取りの決定的瞬間が映っていましたが、結局鈴木プロデューサーが決めているわけです。それは宮崎・高畑没後、ジブリのエースを庵野にしたい政治的思惑であり、「日本のアニメーションを頼む」という師匠宮崎のメッセージです。息子吾朗の才能を見切った上でのせつない遺言といえます。(リュウノスケ、2013.8.29)


町山智浩 風立ちぬ 評価 「あのシーン,人物,声優の意味」宮崎駿 引退作品



「ライムスター宇多丸が映画『風立ちぬ』について熱く語る!」ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル 2013年08月17日



宮台真司は 「風立ちぬ」 をどう見た? 2013.08.16



岡田斗司夫の海賊生放送 ジブリ最新作公開記念特番 「岡田斗司夫が"風立ちぬ"の感想を語るよ!」



<参照>
特定非営利活動法人 日本禁煙学会 ACTION 映画「風立ちぬ」でのタバコの扱いについて要望書を送付
ウィキペディア 秋本治 趣味・嗜好
ウィキペディア 禁煙ファシズム
ウィキペディア 映画のレイティングシステム
posted by リュウノスケ at 01:08| Comment(0) | TrackBack(0) | ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする