2011年04月28日

「年間20ミリシーベルト以下」文科省の許容放射線量は妥当なのか

 文部科学省が福島県の子供の許容放射線量を(結果的に従来より)引き上げたことを知り、失望した。設定された基準値は毎時3.8マイクロシーベルトで(単純計算すると)年間33ミリシーベルト以上に相当する。これは、幼稚園や保育園、小中学校に通う子供に適用される。どういうことか、考察してみたい。

 広く認められた科学的知見によれば、健康への放射線量のリスクは線量に比例する。線量が大きくなるほどリスクが増える。リスクが皆無という水準はない。

 国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告では、あらゆる被ばくは達成可能な限り低減すべきであり、公衆の線量限度は自然放射線と医療行為による放射線を別として、年間1ミリシーベルトだ。原子力産業の作業員の最大許容量は5年間の平均が年間20ミリシーベルトで、50ミリシーベルトを超える年があってはならない。

 日本では作業員の最大許容量は(緊急時のため)100ミリシーベルトで国際的水準より高かったが、福島第1原発事故の事態深刻化で250ミリシーベルトに引き上げられた。

 米科学アカデミーの報告書は、1ミリシーベルトの被ばくで、1万人に1人が白血病以外のがんに、また10万人に1人が白血病になるリスクが増え、1万7500人に1人ががんで死亡するリスク増があると推測している。

 だが重要なのは、誰もが同じ水準のリスクにさらされているわけではないということだ。1歳以下の幼児は大人に比べ、がんのリスクが3〜4倍高くなる。女児は男児よりも2倍影響を受けやすい。被ばくで女性ががんになるリスクは全体として、男性より40%大きい。

 放射線に対する感受性が最も強いのは子宮内の胎児だ。英オックスフォード大の先駆的な小児がん調査の結果、母体のエックス線検査で胎児が10〜20ミリシーベルトの被ばくをした場合、15歳以下の子供のがん発症率が40%増加することが分かった。

 ドイツでは、25年間の全国の小児がん登録データによる最近の研究で、原子力発電所が通常に運転されていても、原発の5キロ圏内に住む5歳以下の子供の白血病リスクは2倍以上となることが示された。リスク増は50キロ以上離れた場所に及んでいた。予想よりはるかに高いリスクだ。胎児、幼児が特に放射線に弱いことが際立つ。

 外部被ばくを監視する典型的な線量計で測定できる放射線に加え、福島の子供たちは、呼吸で肺に入った粒子や、汚染された食品や水を口にすれば内部被ばくもする。多くの放射性物質が食物連鎖で蓄積され、人間に摂取される。

 親として、また医師として、福島の子供たちに、このような放射線被ばくをさせることを許す決定は、われわれの子供と将来の世代を守る責任の放棄であり、受け入れられない。(豪メルボルン大准教授 ティルマン・ラフ)

 TILMAN RUFF 55年オーストラリア・アデレード生まれ。モナッシュ大で医学を学ぶ。メルボルン大ノッサル世界保健研究所准教授。非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際運動」の議長。(山陽新聞、2011.4.27)


 文部科学省と福島県は21日、放射線の影響で屋外活動が制限されることになった幼稚園、小中学校などの保護者を対象にした説明会を開いた。同省担当者や専門家は「基準は余裕をもって設定しており、健康被害は起きない」と強調したが、親たちからは疑問の声が噴出した。

 文科省は19日、子供の被ばくを年間20ミリシーベルト以下に抑えるため、国の調査結果で毎時3.8マイクロシーベルト以上を検出した福島、郡山、伊達各市の計13校・園に対し、体育などの屋外活動を1日当たり1時間に制限するよう通知した。

 この日、福島市であった説明会には、同市で制限対象となった10校・園の関係者や保護者ら約650人が集まった。同省や放射線の専門家の説明に納得できず、詰め寄る保護者も。ある小学生の父親は「放射線をなぜ、福島の子だけが浴びなければいけないのか。計画的避難の基準になるような20ミリシーベルトという高い数字で判断していいのか」と、制限基準を疑問視した。

 「校庭や砂場の土の入れ替え」や「生徒全員の線量計」などを要望する声も出た。母親の1人が「『土いじりや花摘みはだめ』と子に言わないといけない親の心を考えてほしい。『過度に心配するな』と言うなら、具体的な対策を示してほしい」と訴えると、拍手も起きていた。(毎日新聞、2011.4.21)


 文部科学省が発表した年間20ミリシーベルトという基準は妥当か否かという問題。不安を煽る気は毛頭ありませんが、子どもたちが癌や白血病になるリスクを背負うわけで、日本人全員が自分のこととして考えなければなりません。

「国際放射線防護委員会(ICRP)のPublication109(緊急時被ばくの状況における公衆の防護のための助言)によれば、事故継続等の緊急時の状況における基準である20〜100mSv/年を適用する地域と、事故収束後の基準である1〜20mSv/年を適用する地域の併存を認めている。また、ICRPは、2007年勧告を踏まえ、本年3月21日に改めて「今回のような非常事態が収束した後の一般公衆における参考レベル(※1)として、1〜20mSv/年の範囲で考えることも可能」とする内容の声明を出している。このようなことから、児童生徒等が学校等に通える地域においては、非常事態収束後の参考レベルの1−20mSv/年を学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的な目安とし、今後できる限り、児童生徒等の受ける線量を減らしていくことが適切であると考えられる」(文部科学省)

 文科省が基準の根拠としたのはICRPのデータですが、これを児童に当て嵌めてよいものか。20ミリシーベルトというのは平時の原発作業員レベルの話。避難区域をこれ以上広げられない苦肉の策として基準が決まったとしか思えず、将来禍根を残すかもしれません。

 現実問題として地元住民が引っ越せないのならば、どのような対策をして被曝線量を抑えればいいのか。一応文科省のサイトに色々書いていますが、不安は残ります。とりあえずあまり外で遊ばせないほうがいいでしょう。

 因みに上記ラフ准教授のいう33ミリシーベルトというのは24時間屋外にいた場合の年間被曝量。文部科学省の計算は、(3.8μSv×8時間【屋外】+1.52μSv×16時間【屋内:木造家屋】)×365≒20mSv/yです。


 <学校放射線基準は「安全でない」 ノーベル賞受賞の米医師団>
 福島第1原発事故で政府が、福島県内の小中学校などの屋外活動制限の可否に関する放射線量の基準を、年間20ミリシーベルトを目安として設定したことに対し、米国の民間組織「社会的責任のための医師の会(PSR、本部ワシントン)」が2日までに「子供の発がんリスクを高めるもので、このレベルの被ばくを安全とみなすことはできない」との声明を発表した。

 PSRは1985年にノーベル平和賞を受賞した「核戦争防止国際医師の会」の米国内組織。

 声明は、米科学アカデミーの研究報告書を基に「放射線に安全なレベルはなく、子供や胎児はさらに影響を受けやすい」と指摘。「年間20ミリシーベルトは、子供の発がんリスクを200人に1人増加させ、このレベルでの被ばくが2年間続く場合、子供へのリスクは100人に1人となる」として「子供への放射線許容量を年間20ミリシーベルトに引き上げたのは不当なことだ」と批判した。(共同通信、2011.5.2)


 <福島の学校、線量年1ミリ・シーベルト以下目標>
 高木文部科学相は27日の閣議後の記者会見で、福島県内の学校で子供が1年間に浴びる放射線量について、「今年度は当面、年間1ミリ・シーベルト以下を目指す」と述べた。

 これまで同省が示していた基準(年間1ミリ・シーベルト〜20ミリ・シーベルト)は変えないものの、初めて「1ミリ・シーベルト以下」という目標に言及した。

 また、小中学校の校庭などで通常より高い放射線量が検出され、一部自治体で進めている表土除去費用については、98%までは国費で負担する方針も示した。残り2%は自治体の負担となる。

 同省は「上限20ミリ・シーベルト」を根拠に校庭などで毎時3・8マイクロ・シーベルト以上の場合は、体育や部活動を1時間以内に制限するなどの基準を策定。これについては、保護者などから基準の引き下げを求める声があがっていたこともあり、高木文科相は「20ミリ・シーベルトを目安としつつ、できる限り線量を減らしていく」として、可能な限り低い線量を目指す考えを示した。(読売新聞、2011.5.27)


 <疫学調査:低線量でも白血病リスク 国際がん研究機関>
 低線量の放射線を長期間にわたって浴びることで、白血病のリスクがごくわずかだが上昇するとの疫学調査結果を、国際がん研究機関(本部フランス)などのチームが英医学誌ランセット・ヘマトロジーに発表した。

 欧米の原子力施設で働く30万人以上の被ばく線量と健康状態のデータを分析した。低線量被ばくの健康影響を統計的に示した研究は少なく、東京電力福島第1原発などで働く作業員や、放射線機器を扱う医療従事者の健康管理に役立つ可能性がある。

 リスク上昇が非常に小さいため、国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告に基づいて政府などが定める被ばく線量限度の再検討は必要なさそう。ただ一定の線量を超えないと健康影響は出ないとする考え方は見直しを迫られそうだ。

 チームは過去約60年間、フランスと英国、米国の原発や核燃料施設などで1年以上働いた約30万8300人の健康状態と被ばく線量の関係を統計的に分析した。

 結果は、被ばくがなくても白血病を発症する可能性を1とする「相対リスク」を考えた場合、1ミリシーベルトの被ばくごとに相対リスクが1000分の3程度上昇するという内容。100ミリシーベルト以下の低線量でもリスクはなくならないとした。

 作業員の年間被ばく線量は平均1.1ミリシーベルト、積算線量は平均15.9ミリシーベルトで、531人が白血病で死亡。リンパ腫なども調べたが、明確なリスク上昇は確認できなかった。

 ICRPは100ミリシーベルトを超すと発がんリスクが高まると指摘。それより低い線量では、健康影響を懸念する専門家と、心配ないとする専門家で意見が分かれている。

 今回の研究費は、米エネルギー省や日本の厚生労働省などが拠出した。(共同、毎日新聞、2015.7.2)


 バンダジェフスキーは突然死を含む被曝小児患者の病理解剖を行い、セシウム137の体内分布を調査した。骨格筋をはじめとして、心臓、腎臓、肝臓、甲状腺・胸腺・副腎などに高いセシウム137の集積と心臓の組織障害が認められた。再生能力が高い骨格筋細胞と違い、心筋細胞はほとんど分裂しないためにセシウム137が過剰に蓄積しやすく、心筋障害や不整脈などの心臓疾患が惹起されやすいと考察している。さらに、セシウムにより人間や動物の体内に引き起こされる病理学的変化を『長寿命放射性元素体内取り込み症候群=Syndrome of long-living incorporated radioisotopes(SLIR)』と命名した。SLIRは生体に放射性セシウムが取り込まれた場合に生じ、その程度は取り込まれたセシウムの量と時間で決まる。そして、その症候群は心臓血管系・神経系・内分泌系・免疫系・生殖系・消化器系・尿排泄系・肝臓系における組織的・機能的変異によって規定される。SLIRを惹起する放射性セシウムの量は年齢、性別、臓器の機能的状態により異なる。小児の臓器と臓器系統では、50Bq/kg以上の取りこみによって相当の病的変化が起こり始める。10Bq/kgを超える濃度の蓄積で心筋における代謝異常が起こり始める。

 ベラルーシで医療活動を行った長野県松本市長の菅谷昭(外科医)は、バンダジェフスキーの論文を読み、『ベラルーシにいる時に心臓血管系の病気が増えていることを不思議に思っていましたが、この(バンダジェフスキー)論文で納得しました。解剖した結果ですから、非常に信頼性が高い。がんもさることながら今後は福島の子どもたちの心臓が心配です』と発言した。

 2011年に発生した福島原発事故について、バンダジェフスキーは以下のコメントを寄せている。

 『日本の子供がセシウム137で体重キロあたり20 - 30ベクレルの内部被曝をしていると報道されたが、この事態は大変に深刻である。子供の体に入ったセシウムは心臓に凝縮されて心筋や血管の障害につながる。(全身平均で)1キロ当たり20 - 30ベクレルの放射能は、体外にあれば大きな危険はないが、心筋細胞はほとんど分裂しないため放射能が蓄積しやすい。子供の心臓の被曝量は全身平均の10倍以上になることもある』

 また、被曝の影響は胎児や子供に大きく生じ、遺伝の影響が次世代に現れる可能性や、日本の食品の暫定規制値について「大変に危険」とし、さらに食品に関する影響への懸念として、「今後放射能が土壌に浸透して野菜が吸収しやすくなる」などを表明した。(ウィキペディア ユーリ・バンダジェフスキー)


<参照>
文部科学省 東日本大震災関連情報
グーグル動画検索 小佐古敏荘
ウィキペディア 低線量被曝問題
ウィキペディア ユーリ・バンダジェフスキー
posted by リュウノスケ at 02:45| Comment(3) | TrackBack(0) | ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする