2011年04月05日

「電源喪失が炉心溶融を招く」経済産業省原子力安全保安院炉心溶融可能性認識

 経済産業省原子力安全・保安院の寺坂信昭院長が昨年5月、電源が失われて核燃料が冷やせなくなって一部が溶ける「炉心溶融」が国内の原発で起こることが論理的にあり得ると国会答弁していたことが、3日までに分かった。電源喪失に伴う炉心溶融は福島第1原発で実際に起きているとされているが、政府は数時間後に電源が回復し、溶融は起きないとの想定を変えなかった。米国では早くから関連研究がなされ日本にも紹介されていたが、十分な手は打たれなかった。

 昨年5月の衆院経済産業委員会。寺坂院長は「小さい確率の事態が全部実現」すると、電気が供給できなくなって冷却機能が失われ「炉心溶融につながることは論理的には考え得る」とした。電源喪失が炉心溶融を招く危険性を指摘した共産党の吉井英勝議員への答弁だった。

 原発の燃料は、運転停止で核分裂の連鎖反応が止まるが、その後も高い熱を出し続ける。冷却機能が働かないと過熱し、いずれ溶融する。今回の福島第1原発では、運転中の原子炉は地震後に停止したが外部電力が途絶えた。非常用電源が一時動いたが、その後の津波で機能を喪失、電源が完全になくなり燃料を継続的に冷やせなくなった。

 炉心溶融も「考え得る」とした寺坂氏だが、直前の答弁では「多重性、独立性のある非常用電源を備えるなどの多重防護の考え方で設計がなされ、安全性を確保している」と強調。発生の可能性を深刻にとらえていなかったことがうかがえる。

 米国では1980年代、既にオークリッジ国立研究所が、福島第1原発1〜5号機と同型のマークTという原子炉を対象に、電源喪失時のシミュレーションを実施した。外部電源が失われ、非常用ディーゼル発電機も使えなくなって冷却機能が働かなくなるとの想定だ。

 それによると、燃料は8時間後に露出、10時間後に溶融が始まる。11時間半後には燃料が崩壊し、12時間後に原子炉圧力容器が損傷。13時間半で原子炉格納容器の機能が損なわれるとした。

 福島第1原発でも、燃料の露出と一部溶融が起きたと考えられ、圧力容器が損傷した恐れも。詳しい発生時刻は不明だが、80年代に考えられていたのと同様の流れが途中まで続いたことになる。

 日本の原発の安全評価をする独立行政法人原子力安全基盤機構は2007年の報告書で、敷地内の複数の原子炉が損傷する要因は「地震がドミナント(主)に見えるが、外部電源喪失と洪水も寄与が大きい」とする米での評価結果を紹介していた。

 実際の対象にはどこまで生かされたのか。
 
 保安院は「もともと電源喪失は起こりにくく、起きても数時間で復旧できるとの考え方に基づき安全設計をしていた」と説明。東電は「(すべての電源の)喪失は想定できるが、そこに至る前に多重防護(での対応が)可能と考えていた」とし、いずれも電源喪失の恐れを認識したにもかかわらず危機意識が薄かった。

 元日本原子力研究所研究員で核・エネルギー問題情報センターの舘野淳事務局長は、米国の研究は日本でもよく知られていたはずだが、実際の対応はおざなりだったのではないかと指摘。

 「例えば千年に一度の地震や想定の2倍の高さの津波でも非常用発電機は守るという哲学があれば、大丈夫だったと思う。『こんな津波は来ない』と思い込みでやってきたので、事故につながったのではないか」と話している。(山陽新聞、2011.4.4)


<参照> 
衆議院会議録情報 第174回国会 経済産業委員会 第14号
posted by リュウノスケ at 22:09| Comment(0) | TrackBack(0) | ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする